36.8℃の微熱。
 
そうして先生は、全く遠慮する素振りもなくあたしの家に上がってしまった。

・・・・晩ご飯が食べたいがために。

そんな先生の陰謀なんて知らないお母さんは、滅多に使わない花柄のヤカンを引っぱり出してお湯を沸かしはじめる。

アナタ、気合い入りすぎです。


「はぁぁぁ〜」


リビングに先生を通し、相手をしなさいと言われたあたしは、でっかいため息をつく。

そりゃ、出ますって。

なにしろ、今ごろは一緒にいるはずのない人といるんだから。

ご飯食べて早く帰れ!


「江田ちゃんちって意外とレトロなんだね。こけしとかあるし」

「お父さんが作った」

「お父さん面白い」

「そりゃどうも」


お母さんが鼻歌混じりでお茶を用意している間、ソファーに座った先生と小さな声で二言三言。

本当は買ったんだけどね。

誰が教えてやるもんか。ふんっ。


っていうか、お兄ちゃんは?

こんなときにいてくれたら、ちょっとは役に立つのに・・・・。

歳も近いんだからさ、お母さんやあたしより話も合うんじゃない?
 

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