少女A。

「じゃあもう行くな。また部活で」

そう言い残し、岡田はこの狭い相談室から出ていった。

岡田は真面目だ。

受験生だからサボらないって言ってるけど、今まで一度だってサボったことなんて無い。

無遅刻無欠席。

そんな絵に描いたような真面目ちゃんだ。

別にあたしは不真面目なわけじゃない。
サボりだって、そんなに無いんだ。

ただ今年になって、誕生日が近くなって、やる気が抜けただけ。


あたしはちょっと傾いてる本棚に近付いた。
本棚には使われてないファイルや古びた本、そしてたくさんのノートが置いてある。

あたしはその中の一冊、緑色のノートを手に取った。

表紙には何も書かれていない。
裏表紙にも、名前すら無い。

だけどあたしはこのノートの中に、たくさんの言葉とか、滲みだした感情とか、理想の現実とかが詰まってることを知ってる。

このノートの持ち主が、神谷だってことも。

この中身は簡潔に言えば小説だ。

夢を書き、そのたび文字がページを喰う。

どんな内容かは知らない。

でも小説ってことは確かだ。






< 11 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop