少女A。
「じゃあもう行くな。また部活で」
そう言い残し、岡田はこの狭い相談室から出ていった。
岡田は真面目だ。
受験生だからサボらないって言ってるけど、今まで一度だってサボったことなんて無い。
無遅刻無欠席。
そんな絵に描いたような真面目ちゃんだ。
別にあたしは不真面目なわけじゃない。
サボりだって、そんなに無いんだ。
ただ今年になって、誕生日が近くなって、やる気が抜けただけ。
あたしはちょっと傾いてる本棚に近付いた。
本棚には使われてないファイルや古びた本、そしてたくさんのノートが置いてある。
あたしはその中の一冊、緑色のノートを手に取った。
表紙には何も書かれていない。
裏表紙にも、名前すら無い。
だけどあたしはこのノートの中に、たくさんの言葉とか、滲みだした感情とか、理想の現実とかが詰まってることを知ってる。
このノートの持ち主が、神谷だってことも。
この中身は簡潔に言えば小説だ。
夢を書き、そのたび文字がページを喰う。
どんな内容かは知らない。
でも小説ってことは確かだ。