少女A。
同級生。
「神谷、早くこれ作ってよ」
月を誘う夕暮れを背に、あたしは神谷の隣に立っていた。
相変わらず顔を上げてくれない。
「副部長ー、こっちは終わりました!」
「ほら、あとあんただけだよ」
クラス内では全くもって話さないが、あたしが副部長ということもあって、珍しく大人しい問題児とよく一緒にいる。
なんの副部長だって?
実は演劇部です。
部長が骨折して入院してる間、あたしが仕切ることになってる。
後輩達は慕ってくれてるけど、同級生の友達がゼロに限りなく等しいあたしには、どう接していいかわからない。
中学校生活最後の劇、失敗させるわけにはいかないのに。
冬まで帰って来ないだろう部長の代わりにずっとあたしが、リーダー。
元々村人Aとか、超脇役しかやったことないあたしが、リーダー。
夏が終われば引退のはずだけど、文化祭と一緒にやるから劇終了まであたしが、リーダー。
はっきり言って荷が重い。