少女A。
「何これ黄色にすんの?」
「そんな予定ないけど」
「でも神谷はそうしたいってことだろ」
さらに神谷は筆で黄色を伸ばし始めた。
これは本当の意味で、“黄緑”となってしまう。
あたしは“緑黄”派なのに。
“緑黄色野菜”とか出てくると嬉しいのに。
「神谷、違うのやってよ。あたしがそれ作り直すからさ」
「そんなん可哀相だろーが。神谷だって一生懸命やってんだよ」
怒った口調で岡田は反論してくる。
神谷の久々の動きはピタッと止まった。
あたしは何だか泣きたかった。
「だってラチあかないじゃん! 全部黄色い木なんて出せないよ」
「秋には……イチョウが、あります」
あたしと岡田は、一瞬時が止まったかのように静止した。
ゆっくりと見下ろすと、神谷がフルフルと震えていた。