少女A。
「あ、帰ってきた。カジー!」
家の門を開けようとすると、左から陽気な声が聞こえてきた。
少し上擦った、悪く言えば耳につく声。
「――ヒロ」
あたしはその人の名前を呟いた。
今日も古着をかったるそうに着ている。
唯一あたしをカジと呼ぶ従姉妹。
家が近所なのもあって、いつも部活終わり、家の前で待っててくれるんだ。
ヒロはあたしと同級生。
あたしは二組だけど、ヒロは岡田と同じ四組にいる。
このヒロは、中学で一回も遅刻していない。
先生に注意されたことすらも、たぶんない。
これだけだと、ヒロがいい子ちゃんに思えるだろう。
だけど、それは違う。
入学式以来、学校に行ってすらいないんだ。
目の前の浅川広美は。
何故かは知らない。
いや、どっちでもいいっていうのが本音だろう。
自分が、そう言ってるような気がする。