少女A。
時々、隣に座っている先生の肘がぶつかる。
あぁ残念。
これで先生が男だったらいいのに。
でも先生は正真正銘子持ちの奥様なんだ。
「先生、気持ち悪いんで保健室行ってもいいですか」
声を小さめにして、歪んだ顔見せたらすぐ向かわせてくれた。
なんて都合のいい先生なんだろう。
あたしが校庭を横切ると、皆がそれぞれのペースであたしを見出す。
そしてヒソヒソという声が重なって、小さいのか大きいのかわからない雑音が耳を貫いてきた。
見学なんて嘘だとか、サボりに行くんだとか。
セコいだとかズルイだとか。
こんな大人数で一人のこと言うほうがズルイでしょ。
嘘か本当かわからないことを、交えたことを言い合って。
まるっきり出鱈目なら、訴えがいがあるのに。