少女A。

確かに保健室へ行く気はない。

でも気持ち悪いのは本当だ。

つまり嘘と真が半々ってこと。


靴を古びた下駄箱に入れると、赤いスリッパを乱暴に投げた。

階段のほこりを掃い、灰色いスカートの裾から細っこい脚を出した。


「このまま眠ろうか。そしたら全部忘れるさ」

なんの意味も持たない言葉。
あたしの悪い癖。

何か心の中で呟いてないと落ち着かない。
何か口にしてないと落ち着かない。

胸のモヤモヤを手で押し潰す。

泣きたい衝動。

誰かに伝わるでしょうか。

足音が響くのを聞いて、そっと近くの影に隠れる。

気付いてよ、


そんな可哀相な願いは、舞い上がる塵とともに消えていった。



――キーンコーン


あぁ、無機質な機械音。

昼休みが始まった。


スリッパをキュッと鳴らし、線の上を歩くように無理矢理真っ直ぐ足を動かした。

誰にもばれないよう、教室に戻ろう。

別に愚痴を言われるからじゃなく、何故か心配してくれるからだ。





< 5 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop