少女A。
確かに保健室へ行く気はない。
でも気持ち悪いのは本当だ。
つまり嘘と真が半々ってこと。
靴を古びた下駄箱に入れると、赤いスリッパを乱暴に投げた。
階段のほこりを掃い、灰色いスカートの裾から細っこい脚を出した。
「このまま眠ろうか。そしたら全部忘れるさ」
なんの意味も持たない言葉。
あたしの悪い癖。
何か心の中で呟いてないと落ち着かない。
何か口にしてないと落ち着かない。
胸のモヤモヤを手で押し潰す。
泣きたい衝動。
誰かに伝わるでしょうか。
足音が響くのを聞いて、そっと近くの影に隠れる。
気付いてよ、
そんな可哀相な願いは、舞い上がる塵とともに消えていった。
――キーンコーン
あぁ、無機質な機械音。
昼休みが始まった。
スリッパをキュッと鳴らし、線の上を歩くように無理矢理真っ直ぐ足を動かした。
誰にもばれないよう、教室に戻ろう。
別に愚痴を言われるからじゃなく、何故か心配してくれるからだ。