少女A。
「ったく……今度は電話だ」
歪んだ表情をして、岡田は長い指先を使いこなし通話ボタンを押した。
あたしといることがバレないようにか、パッと後ろを向く。
立ち上がった岡田の手は、ポケットに入れられた。
「もしもし? 名倉うるさいよ。別にどこ居たっていーだろ」
岡田はさっきとは違う少し高めの声で話し出す。
もともとソプラノ声だから、これが当たり前なんだけど。
「じゃーな。もう学校で電話すんなよっ」
きっと岡田は容姿やらを除くと、その辺の中学生と変わらないだろう。
でも、あたしに付き合ってくれる時点で、岡田はこの世界の誰よりも特別だ。
あたしは話し終わった岡田に対して、わざと不服そうな顔をした。
「――誰?」
さっきからずっと、相手はわかっているけど。
「あぁ、同じクラスの名倉だよ。梶浦も一年のとき一緒じゃなかった? まぁとにかく、友達」
「ふーん」