今、空に太陽は昇っていますか?
糸井海斗は下を向き、弱々しく言った。

「空の望みなんだよ。お前には知られたくないって。北山の幸せを壊したくないから。せめて、北山の記憶には元気な私の姿のまま消えたいって。何で空ばっかり・・いつも辛い思いをしなきゃいけないんだよ。」

そう言って糸井海斗は俺を睨み付けた。

「太陽、ここ病院だよ。もう辞めようよ。」

病院で声を上げる俺達に、沢山の冷たい視線が集まっていた。

「陽・・・・・。」

何かを思いだしたかのように悲しそうな顔でそう呟き、空は一粒の涙を流した。

あの雨の日と同じ。

俺の胸が痛んだ。

「いやだよ。いやだ。行かないで。」

「空、大丈夫だよ。」

そう言って糸井海斗は、泣き崩れる空をそっと抱き締めた。
< 294 / 317 >

この作品をシェア

pagetop