アイスクリームパニック
「名前何ていうの?」

「ユキ。あんたは?」

「海」

「海?」

「海」

海という名の青年はユキを玄関の前まで連れてくると名前を尋ねた。そしてチャイムを鳴らすと、ドアの鍵を開けた。

「誰もいないみたい」

「本当にいいの?」

「何が?」

「アイスクリーム」

「ユキのためのアイスクリームだろ?」

「私のため?」

「だってユキがアイスクリーム食べたいっていうから」

「そうだけど…」

海が訳の分からないことをいうので、ユキは口をつぐんだ。でも、とりあえずアイスクリームが食べられればいい、とも思った。

「どうぞ」

いつの間にか海はアイスクリームを2つ持っていた。

「どこから持ってきたの?」

「冬」

「冬?」

「冬。夏はアイスクリームが溶けちゃうから」

海が冬から持ってきたというアイスクリームは、見たこともないほどおいしそうで、ユキは訳の分からない会話よりもアイスクリームに釘付けになった。
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