蝉時雨を追いかけて
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「ここに座って話をしてるだけでいいんですか?」
おれの隣で、北村麗華が訊ねてきた。
「ああ、そうらしい」
あれから、北村麗華にはすべてを話した。裏サイトのこと、犯人がおそらくゲジであること。
北村麗華は最初戸惑っていたが、トラップを仕掛けることには参加してくれた。
そして部活終了後、公園の緑色のベンチに、北村麗華とふたりで座っていた。
彼女が拓馬とキスをした場所だ。
おかっぱの作戦は、実に単純だった。
キスをしたのと同じ場所に座っていれば、きっとゲジが写真を撮りに現れるというものだ。
他に画期的なアイディアも思いつかなかったので、不本意だがおかっぱの作戦にのることにした。
北村麗華は落ち着かないのか、差した傘をくるくる回していた。
つい先ほどから、雨が降り始めていた。
梅雨は終わったばかりだが、まだその名残を惜しんでいるかのような、体にまとわりつく雨。
おれたちはそれぞれ傘を差していた。