蝉時雨を追いかけて
代表選手
 ゲジが犯人だということがわかった次の日、おれたちのダブルス復活が決まった。

どうやらゲジはおれが北村麗華と浮気していると思ったらしく、嫌がらせとしてダブルス解散を決めたらしい。


 一週間、部活動中のダブルス練習も復活できたことで、万全の状態でこの日を迎えることができた。

田端荻窪との試合の日だ。


「昨日言った通りっ、今から拓海岡田コンビと田端荻窪コンビの試合を始めるっ!」


 ゲジが高らかに宣言した。

昨日、ダブルスの専門として練習をしてきたおれたちと田端荻窪のどちらかを出場選手にするとゲジから発表があった。

大会にはもう一組出場できるのだが、拓馬が戻ってくると信じて、拓馬と副部長のペアはフリーパスで出場が決定した。


「ゲジのヤツ、今までの謝罪として、判定をオレたちの有利にしてくれないかしら」


 コートの中で、おかっぱが話しかけてきた。


「そんなので勝ってもうれしくないだろ。そういえばおかっぱ、ずっと気になってたんだが、なんでゲジはNATTOなんてハンドルネームにしたんだろうな」


「アラ、まだ知らなかったの? 納豆ってゲジの昔のあだ名らしいのよ。内藤って苗字のゲジが“っ”をつけるしゃべりかただから、なっとうになったらしいわ」


「ああ、そうか」


 まさか、そんなどうでもいい理由で茨木さんを疑うことになったとは。

それにしても、ゲジって内藤っていう苗字だったっけ。忘れてた。

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