蝉時雨を追いかけて
 

***


 いよいよ、試合が始まる。ネットをはさんですぐ近くで、おれたちは向かい合っていた。


「ダメ先輩、マジで俺っちたちとヤル気なんすか? 時間のムダじゃん。なあ、荻窪」


「…………………………うん」


「なによアンタたち、オレたちに勝つ自信がないの?」


 おかっぱが田端荻窪を挑発した。


「そんなわけないっしょ。自信もなにも、俺っちたちが負けるわけないじゃん。なあ、荻窪」


「…………………………うん」


「ならいいじゃない。さっそく始めましょうよ」


 そして戦いは始まった。


 田端荻窪は強かった。見た目は暗いカマキリだがしゃべりはチャラい田端の意外性のある攻撃。

そして、見た目はチャラいクマだがしゃべりは暗い荻窪の強烈なショット。

ふたりの息もぴったりで、かなりやっかいな相手だった。だが、息に関してはおれたちも負けていない。

おれの体力とおかっぱの観察力で必死に戦う。相性は互角。実力に関しては、やや向こうのほうが上だった。

が、しかし。結局、勝負を分けたのは、準備の差だった。

かなりの接戦になったが、おれたちは田端荻窪コンビに勝利した。
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