蝉時雨を追いかけて
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試合終了。またしてもネットをはさんで向かい合った。
「オレたちの方が強かったようね」
おかっぱはここぞとばかりに踏ん反り返った。白い汗がうしろに垂れていた。
「ふざけんなよ! なんで俺っちたちが負けんだよ。俺っちたちの方が上手いじゃねえかよ。なあ、荻窪」
「…………………………うん」
「そうね、アンタたちの方が上手かったわ」
「だろ? だからこんな勝負無効だっつーの。次やったら俺っちたちが勝つに決まってんだよ。なあ、荻窪」
「…………いや、今のままじゃ次やっても負ける」
いつもは「うん」しか言わない荻窪が、小さな声でしゃべった。
おれたちだけでなく、田端まで荻窪がしゃべったことに驚いている。