蝉時雨を追いかけて
 

***


 試合終了。またしてもネットをはさんで向かい合った。


「オレたちの方が強かったようね」


 おかっぱはここぞとばかりに踏ん反り返った。白い汗がうしろに垂れていた。


「ふざけんなよ! なんで俺っちたちが負けんだよ。俺っちたちの方が上手いじゃねえかよ。なあ、荻窪」


「…………………………うん」


「そうね、アンタたちの方が上手かったわ」


「だろ? だからこんな勝負無効だっつーの。次やったら俺っちたちが勝つに決まってんだよ。なあ、荻窪」


「…………いや、今のままじゃ次やっても負ける」


 いつもは「うん」しか言わない荻窪が、小さな声でしゃべった。

おれたちだけでなく、田端まで荻窪がしゃべったことに驚いている。
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