蝉時雨を追いかけて
「茨木さん、正気か?」


「なにが?」


「いや、その、おかっぱのことが好きなのか?」


「そうだよ。いいよねー、あの臭いが」


「臭い?」


「そうだよ。おかっぱちゃんて納豆みたいな臭いがするじゃん」


 まさか風呂に入ってないことが高評価につながるとは。なんという幸運。そしてなんという納豆好き。


「拓馬ちゃんはやっぱりきてないの?」


「ああ、きてないよ」


「そっか。楽しみにしてたんだけどな。じゃあ拓海ちゃん、このお守りあげるよ。ホントは拓馬ちゃんにあげるつもりだったけど」


 そのお守りとは、パックの3つ入り水戸納豆だった。まあ、そんなところだろうと思ったよ。


「あ、ありがとう」


 もし拓馬に渡していても、煙たがられたに違いない。
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