蝉時雨を追いかけて
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「おしかったなっ! もう少し頑張って欲しかったがなっ!」
負けた直後、フェンスの外で見学していた部員のもとに戻ると、ゲジがまゆ毛をぶちぶち抜きながら慰めてくれた。
相当にくやしがっていることは明白だった。
北村麗華の顔をのぞくと、うなずいて微笑みかけてくれた。
それだけで、おれは幸せな気持ちになれる。くやしいという気持ちが、すこし和らいだ。
おかっぱは、鼻血を流しながら茨木さんとなにかしゃべっていた。
あいつはもしかしたら、まったくくやしいなんて思っていないのかもしれない。
茨木さんはちょっと顔がひきつっているから、おかっぱのキモさにいよいよ気付いたのだろう。
拓馬には勝てなかった。
実力が100%発揮できたわけではなかったが、試合のときにどれだけ自分たちの実力が出せるのかということも、実力の内だ。
ちょっと努力したくらいじゃ、本当に努力していた人間に勝つことはできない。