蝉時雨を追いかけて
拓馬は笑みを浮かべたままだった。その言葉だけで、全てを悟ったように見えた。
「良かった。安心したよ」
「おまえ、まだ勘違いしてるんじゃ……」
「ねえ拓海」と、拓馬がおれの言葉をさえぎった。
「僕の家庭教師をしてくれないか?」
「おれが?」
「頼むよ。浪人はしたくないからね。夏休みは麗華も部屋に入れないつもりさ」
おれは黙ってうなずいた。断る理由なんてない。
すると拓馬は立ち上がって、机の引き出しから便箋を2通取り出し、おれに握らせた。
それぞれに、拓馬へ、麗華へと書かれている。
「僕が受験に成功して、この家から出たら、そのときこの手紙を読んでおくれ」
おれはもう一度うなずいた。なぜ北村麗華宛ての手紙があるのか、おれにはわからなかった。
「良かった。安心したよ」
「おまえ、まだ勘違いしてるんじゃ……」
「ねえ拓海」と、拓馬がおれの言葉をさえぎった。
「僕の家庭教師をしてくれないか?」
「おれが?」
「頼むよ。浪人はしたくないからね。夏休みは麗華も部屋に入れないつもりさ」
おれは黙ってうなずいた。断る理由なんてない。
すると拓馬は立ち上がって、机の引き出しから便箋を2通取り出し、おれに握らせた。
それぞれに、拓馬へ、麗華へと書かれている。
「僕が受験に成功して、この家から出たら、そのときこの手紙を読んでおくれ」
おれはもう一度うなずいた。なぜ北村麗華宛ての手紙があるのか、おれにはわからなかった。