蝉時雨を追いかけて
 拓馬が死んでから2週間が経った今日、おかっぱが、おれの部屋にやってきた。

臭い靴下を脱いで、ベッドの上に立つ。


「拓海、アンタいつになったら学校に来るのよ」


「いつかは行くよ」


「いつかっていつよ! いつまでも落ち込んでるんじゃないわよ。落ち込んでたって、部長は生き返らないのよ!」


「ああ、それくらいわかってる。気持ちの整理ができたら必ず行くさ」


「アラそう。でも、マネージャーはきてるわよ。授業も部活も一日も休まず、つらいのも見せずにね」


「ああ、そうか」


「ホントならアンタがマネージャーを元気付けなきゃいけないのよ? アンタが落ち込んでたら、マネージャーだって部長のことを忘れることが出来ないでしょ」


 それくらいはわかっている。だが、今のおれに北村麗華を元気付けることなど、できそうもなかった。
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