蝉時雨を追いかけて


***


 着信アリ。おれの携帯の着信ボックスは、おかっぱの名前で埋め尽くされていた。

気分が悪くなったので、履歴を全部消してからかけ直した。

すると、コール音が聞こえる前におかっぱの声が聞こえてきた。


 ――オイ拓海、なに勝手に電話切ってんのよ! そのあと何回電話しても出ないし。


 おかっぱがめずらしく怒っている。まあ、本気で怒っているわけではないのだろうが。


「悪いな、おかっぱ。拓馬と話をしてたんだ」


 ――おっ、マジ? で、裏サイトの情報はホントだったの?


 案の定、あっという間にいつものおかっぱに戻る。

なんだかんだいいながらも、最終的に笑って許してくれるのが、おかっぱの数少ない良いところのひとつだ。


「ああ。ついさっき、告白されたらしい」


 ――ワオ! ついさっきって、ずいぶん情報が早かったのねェ。


 そうなのだ。それはおれも気になっていた。

偶然告白を見かけた人が、急いで誰かに知らせたかったのだろうか。


「いくらなんでも早すぎるよな。もしかしたら単なる偶然で、適当に情報を書き込んだら当たったのかも知れないが」
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