蝉時雨を追いかけて
 ――そうねェ、それはあるわね。もしくは、部長かマネージャーのどちらかが書き込んだか。


「少なくとも拓馬ではないな。北村麗華がそういうところに書き込む人間なのかは知らないが」


 ――まあイイわ。それで、オレとダブルスは組む気になったの?


「ああ、おまえと組むことにしたよ」


 ――アラそうってええッ!? 急にどうしたのよ。


「なんだっていいだろ。おれはとにかく、拓馬に勝ちたいんだ」


 ――よくわからないけど、ようやくアタイの魅力に気付いたのね。ウレシイわ、ウフッ。


「あなたの魅力なんて、ひとつもわからないわ」


 ――よっしゃ、そうなれば作戦会議よ。


「なんだよ、作戦会議って」


 ――部長に勝つための作戦よ。ねェ拓海、今から家出られる? 門限とかないわよね?


 時計を見ると、夜の九時になる五分前だった。いつも家を出る時間だ。


「ああ、大丈夫だ」


 ――それじゃあ、十五分後に学校の近くの公園集合よ。


「ああ、わかった」


 おれは電話を切って、急いでジャージに着替えた。
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