蝉時雨を追いかけて


***


 学校の近くにある公園は、公園とは名ばかりで、ベンチくらいしか置いていない空き地だった。

周りを木に囲まれていて、それも入れるとけっこうな広さになるが、広場だけで見ればテニスコートをふたつ並べた程度しかない。


 おかっぱはすでに着いていて、ベンチに座っていた。

ベンチの脇には乗ってきたのであろう自転車が置かれていた。

おかっぱの家は公園のすぐ側にあるはずなのだが、わざわざ自転車できたようだ。

おれは走ってきたので、そのままおかっぱの座るベンチに向かう。


「きたわね、拓海」


「ああ。それで、公園でなにをするんだ?」


「まずはオレの話を聞いてちょうだい。ダブルスでなら部長に勝てる可能性があるっていう根拠よ」


 おかっぱが隣に座るよう手で示したので、それにしたがった。なぜか生暖かい。

おかっぱを見ると、気持ち悪いウインクをしてきた。

そして声には出さずに、「暖めておいたわよ」と口を動かした。なんか逆に寒気がした。
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