蝉時雨を追いかけて
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学校の近くにある公園は、公園とは名ばかりで、ベンチくらいしか置いていない空き地だった。
周りを木に囲まれていて、それも入れるとけっこうな広さになるが、広場だけで見ればテニスコートをふたつ並べた程度しかない。
おかっぱはすでに着いていて、ベンチに座っていた。
ベンチの脇には乗ってきたのであろう自転車が置かれていた。
おかっぱの家は公園のすぐ側にあるはずなのだが、わざわざ自転車できたようだ。
おれは走ってきたので、そのままおかっぱの座るベンチに向かう。
「きたわね、拓海」
「ああ。それで、公園でなにをするんだ?」
「まずはオレの話を聞いてちょうだい。ダブルスでなら部長に勝てる可能性があるっていう根拠よ」
おかっぱが隣に座るよう手で示したので、それにしたがった。なぜか生暖かい。
おかっぱを見ると、気持ち悪いウインクをしてきた。
そして声には出さずに、「暖めておいたわよ」と口を動かした。なんか逆に寒気がした。