蝉時雨を追いかけて
「つまり、真っ向勝負をしたら負けるけど、別の方向に努力をすれば勝負にはなるかもしれないってことよ」
突然熱く語ったせいでおかっぱ頭が揺れて、ふけがパウダースノウのように降ってきた。
おれはそれを必死でよける。おかっぱはふけが落ちるのを気にする素振りも見せない。
「部長たちのダブルスは、ただうまい選手2人が一緒にテニスをしてるってだけなのよ。チームワークで勝負すれば勝ち目はあるわ」
「そんな簡単にはいかないだろ」
「もちろんよ。でも、オレたちなら、お互いの長所を生かせるわ」
「長所?」
「そう。あんた、いつもマジになっては走ってないけど、ホントはかなり体力あるわよね。つまり、あんたの長所は持久力よ」
たしかに、おれは体力には自信がある。
拓馬にはもちろんかなわないが、勉強以外で太刀打ちできる可能性があるとすれば、体力だけだ。
でも、おれは勝負を避けてきた。負けるのが怖かったから。
「その持久力をどう生かすんだ?」
「オレは体力がないわ。だからオレのかわりに、あんたがひたすら後衛で走るの。そうすれば、オレの弱点がカバーできるわ」
突然熱く語ったせいでおかっぱ頭が揺れて、ふけがパウダースノウのように降ってきた。
おれはそれを必死でよける。おかっぱはふけが落ちるのを気にする素振りも見せない。
「部長たちのダブルスは、ただうまい選手2人が一緒にテニスをしてるってだけなのよ。チームワークで勝負すれば勝ち目はあるわ」
「そんな簡単にはいかないだろ」
「もちろんよ。でも、オレたちなら、お互いの長所を生かせるわ」
「長所?」
「そう。あんた、いつもマジになっては走ってないけど、ホントはかなり体力あるわよね。つまり、あんたの長所は持久力よ」
たしかに、おれは体力には自信がある。
拓馬にはもちろんかなわないが、勉強以外で太刀打ちできる可能性があるとすれば、体力だけだ。
でも、おれは勝負を避けてきた。負けるのが怖かったから。
「その持久力をどう生かすんだ?」
「オレは体力がないわ。だからオレのかわりに、あんたがひたすら後衛で走るの。そうすれば、オレの弱点がカバーできるわ」