蝉時雨を追いかけて
「なんだよ、これ」


「見てわからない? 練習メニューよ」


「違うね。これは単なる悪ふざけだ。その4以降は練習ですらないじゃねえか」


「とにかく、これからはこれを毎日やるわよ」


「はあ? このおればっかりきついメニューをか? 学校での練習が終わったあとにやるつもりなのか?」


「どうせ学校の練習は力抜いてるから、なんとかなるわよね。そのメニューは半分冗談で、オレももうちょっとくらいはやるわよ」


「ばか、それなら学校での練習を真面目にやって、このメニューは減らしたほうがいい。だいたい、おまえ体力ないんじゃなかったのかよ」


「そうよ。オレは体力がないから、終わってからじゃないと練習ができないの。学校での練習は、最初の5周で体力の限界がきちゃうのよ」


「違うよ。おかっぱは体力がないんじゃない。ブサイクなんだ」


 おれはおかっぱのブサイクな部分(つまり全身)を指差して、びしっと言い放った。
< 31 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop