蝉時雨を追いかけて
「いま顔は関係ないじゃない」


「いや、顔じゃない。まあ顔もブサイクだけど、いまおれがいいたいのは、走り方だ。おかっぱは走り方もブサイクなんだよ。だから坂上るために勢いなんかつけなきゃいけないんだ」


「そんなこと言われても、どうすればイイのよ」


「おれがきたえてやる。これでも走りにはけっこう自信があるんだよ」


 おかっぱは全力でしかめっ面をしていた。

おそらく自分が持ってきたメニューが受け入れられなかったことと、自分が練習をしなければならなくなったことが悔しいのだろう。

だが、勝つためには、おかっぱにも頑張ってもらうしかない。

ひとりで勝てないなら、ふたりの力を合わせて勝つしかないのだから。
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