蝉時雨を追いかけて
「あれ、マネージャーじゃない?」


 おかっぱに言われて、はっとした。カップルのひとりは北村麗華だ。

あの後ろ姿は何度も見た。一週間も見つめ続けたおれが言うのだから、間違いない。


「ああ、そうみたいだな」


 だけど、隣にいるのは拓馬ではないようだった。スーツを着ていて、それほど若くはなさそうだ。

拓馬よりも恰幅がよく、背も低い。北村麗華は女性にしては背が高い方だけれど、横にいる男は彼女より少しだけ背が高いくらいだ。

拓馬ならば、あと十センチ以上は高い位置に頭があるはずだ。


「どういうことよ、浮気?」


 おかっぱも、隣にいるのが拓馬ではないことに気付いたようだった。


「さあ、どうなんだろうな」


 おれたちはしばらくその後ろ姿を見つめていた。

男の後ろ姿には、なんとなく見覚えがあるような気がした。
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