蝉時雨を追いかけて
 拓馬がふりむいて、片付けをしていた北村麗華を大声で呼んだ。

彼女にも、むらさき色の毛糸のパンツを見せつけている。

こいつはたんなる露出狂なのか? 北村麗華は顔を赤らめながら、小走りで近づいてきた。


「なんですか? まだ夜ではないですけど」


「これからこのふたりとダブルスの試合をするのだよ。僕と北村さんのコンビで」


「え、私がですか?」


「いいでしょう?」


 拓馬が今度は上着をまくった。むらさき色をしたはらまきを見せている。練習中もつけてたのか。


「ええ、わかりました。まだ昼間ですけど、できる限りやってみます」


「言っておくけど、オレたち、本気でイクわよ。容赦はしないからね」


 おかっぱが今度は北村麗華の足元に白い液体をたらした。

北村麗華はひきつった笑顔で、十歩ほど後ずさりした。

おかっぱは怪訝な顔をしている。自分の過ちに気付けよ。


「もちろん、そうしておくれよ」


 拓馬が自信満々にはらまきとパンツを同時に見せた。しつこいな、こいつも。
< 38 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop