蝉時雨を追いかけて
　おれは耐え切れなくなって、教室を離れた。

北村麗華には友だちがいなくて、これからいじめられるかもしれない。

予想していた通りになっている。

おれは彼女を守れるのだろうか。いや、守るとしても、なにをすればいいのだろう。

たとえば、これからいじめをしているやつらに「いじめはやめろ」と言ったところで効果はないだろうし、北村麗華のそばで守るとしても他のやつらには新しい男がまた寄ってきたようにしか見えないだろう。

おれは無力だ。

北村麗華を守ることがおれの使命だと思っていたのに、なにもすることができない。

結局おれは、拓馬にはかなわないんだ。

入学当初、拓馬が彼女と付き合っているとうわさが広まってからは誰も北村麗華に近付かなくなった。

おれは、他のやつらが群がるのを止めることができない。拓馬のようにうまくは守れない。

無理だ。

おれに拓馬の代わりなんてつとまらない。

おれは、どうすればいいのだろうか。
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