蝉時雨を追いかけて
 ――アラそう。それなら、一度ちゃんとマネージャーと話をした方がいいわね。


「なんのだよ」


 ――部長のことをどう思ってるのかとか、部長とは今どうなってるのかとか、スリーサイズはいくつかとか、そういうことよ。


「最後のは必要ないように思うが」


 ――それなら前のふたつくらいは聞いておきなさいよ。それじゃあ、オレは忙しいから切るわね。


 ガサっという通話口に口をつけたときのような音が最後にして、電話は切れた。

キスだとか、そういうことは想像しないようにしよう。


 だが、たしかにおかっぱの言うとおり、一度北村麗華と話をする必要はあるかもしれない。

いじめについて北村麗華がどう考えてるのかとか、裏サイトのことを知ってるのかとか、そういうことも聞いてみたい。

ひとつ、問題があるとすれば、おれに北村麗華に自分から話しかけるだけの勇気があるかどうかだった。
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