馬鹿寮長と天才不良
多分引き攣っているであろう笑顔を浮かべながら私は彼女に近付いた。
「あの、こっちに向かってるって事は、寮に用があるんですよね?」
だってこの先には寮しかないし。
私がそういうと彼女は視線を逸らし俯いた。
「・・・貴方は?」
鈴が鳴るような声って、これなんだなーって思った。
「私、此処の三年生の倉持藍華っていいます。えと・・・」
「辻夷麻夜です、此処の卒業生なの・・・」
そう言って微笑むと、寮の方向へと視線を向けた。
「やっぱり、何か用が?」
私が問い掛けると、辻夷さんは眉を下げて笑った。
「用って程じゃないの、ただ・・・気になっちゃって」
気になる?何を?
「多分学年が違うし、学校来てないからわかんないと思うけど、冴宮那智って知ってる?」
「え、那智君ですか?」
私がいうと辻夷さんはキョトンとした。
「那智の事、知ってるの?」
那智――――――
ズキッ−
ん?なんだ?なんか・・・
「貴方もしかして、新しい寮長?」
「あ、はい」
慌ててこたえると、辻夷さんはびっくりしていた。
「そうなの?実は私も寮長をやっていたの!」
うぇっ!?まじでか。
「・・・那智達、学校来てる?」
「いえ、体育祭にはなんとしても出てほしいんですけど・・・」
じゃなきゃ・・・じゃなきゃ卒業が・・・!!