MH
「貴様は俺の肉体の全てを改造した。骨を、皮膚を、筋肉を、血を、そして脳を…本城隼人という人間は貴様によって肉体を弄ばれ、自我の存在しない兵器になる筈だった…だが、こうして俺は『本城隼人』の意思を保ち、今こうして貴様と対峙している…この意味が分かるか?」

私の目の前で、MHⅡが胸に手を当てる。

「『魂』はここにある。『心』はここにある…どんなに貴様が肉体を人工物に変えてしまおうとも、俺の魂と心だけは改造する事ができなかったんだ」

実にくだらん精神論だ。

魂だの心だの、そんな形のない、目に見えないものを信じていたら、化学者はやっていられない。

人間の肉体など、ただのタンパク質の塊だ。

それをより強度の高いものに作り替え、人間を超越した存在へと変える。

頭に詰まったタンパク質の塊をこそぎ出し、新たなる高度な人工頭脳を埋め込む。

それが私の考える理想の『超人類』。

…しかし。

MHⅡ…本城隼人は現実に自我を取り戻し、こうして私の前で叛旗を翻していた。

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