MH
機関が何者だろうと、目的が何だろうとよかった。

恋人がまた歩けるようになるのならば。

彼が車椅子の生活から脱出できるのならば。

…だが現実は、人体改造の失敗による恋人の死だった。

絶望と喪失感。

やっと選んだ道が間違いだったと気づく頃にはもう遅く。

私は機関で人体実験の第一人者としての地位を確立してしまっていた。

逃げる事も、止める事も許されない。

恋人を失った絶望と喪失感から逃れるには、私自身も狂気に走るしかなかった。

より強く、より優れた改造人間を。

狂った所業と知りつつも、悲しみから逃れる為に罪を重ね続けた。

自らの肉体にさえ狂気のメスを入れ、人である事すら捨て、私は人体実験を続けた。

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