ラグナレク
―――そして、二日後。
僕達審査受講者は、早朝から軍基地にある軍人養成学校の教室に召集された。

僕とバリーは集合時間の十分前程度に教室に入ったのだけれど、既に教室は人で溢れかえっていた。ざっと見た感じでも三十人は間違いなくこの部屋に存在するだろう。
僕達を含めた三十人は、各々で勉強やら何やらを行っていた。教室にいる人間は全員青冷めている、もしくは眠そうに目元に浮かんだくまを擦っており(バリーも眠そうに目を擦ってはいたが、それは断じて勉強の為ではない。夜明け近くまで僕の部屋で遊んでいたからだ)、溌剌とした者はどこにもいない。

僕とバリーは後ろの方に空いていた、縦に並んだ席に腰を下ろした。持ってきたバッグからペンケースと学校で渡された教科書を取り出し、頁をぱらぱらとめくる。
どこを確認しておこうか………と悩んでいる僕の耳に、扉が強く閉められる音が届き、ふと前を見た。

そこに立っていたのは………軍人養成学校にいた顔なじみの男教官と、見知らぬ女性の教官だった。僕と同じように前を見た生徒達が、瞬時にして凍り付く。
時計はまだ集合時間の三分くらい前を指し示していたが、もうここに来たという事は、今からすぐにでも筆記試験を始めるという事だろう。少しも勉強出来なかったなぁ、と嘆きながら渋々教科書を閉じた。眼前に座るバリーは、教科書を取り出しもせず、座り込んだ瞬間から机に俯せになり、爆睡しているようである。流石に放置していると危ないだろうと思った僕は、バリーが目覚めるまで後ろから小突く。段々と威力を増す突きを十回程度繰り返した所で、バリーはようやくのらりくらりと顔を上げた。
バリーが顔を上げるのとほぼ時を同じくして、教卓の近くに立つ男性教官がごほん、と咳ばらいをした。








「あー………元気か?お前ら。見た感じ、全員死にかけてるっぽいが………。ま、根詰め過ぎるのも問題ってこったな」








ひひひ、と彼は悪戯っぽく笑う。………相変わらず、軍の教官っぽくない適当な性格をした人だなぁと僕は鼻を鳴らした。








「………さて、世間話はこれくらいにしてと。実は先生、今日は皆に激励の言葉を贈るように頼まれてここに来たんだよなっ」
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