ラグナレク
どうしたらよいかと逡巡している僕を無視し、クレイは嘲るかのような口調で再度その毒舌の活動を開始させた。
「………あら、お気に召さなかったかしら。―――私が今話した事は、全て事実だけれど?」
「な、なんだと………!」
彼は激昂の色を言葉に込める。怒りに煽られたバリーはいよいよクレイに飛び掛かろうとしており、既に半ばその腕は彼女に向かって伸びていた。
―――これはまずい。
そう悟った僕は、反射的に二人の間に割り込むようにして、睨み合う両者の視線を遮ると共に、伸びかけている逞しい腕を彼の脇腹の近くまで押し戻す。
僕は努めて穏やかに、バリーに話し掛けた。
「―――落ち着きなよ、バリー」
「………レイ………」
彼は少し落ち着いた様子でそう呟く。彼へ笑顔を向けると、僕はバリーを宥めるべく得意の話術を披露し始めた。
「………君は、誰が何と言おうと、これまでの試験をパスしてここまで来たんだろう?なら、それでいいじゃないか。今ここで大切な物、それは過程や経過なんかじゃなくて結果だけなんだ。そして結果、バリーはここに居る。ギリギリだろうが何だろうが関係ないさ。だろう?」
「あ、ああ………そうだよな。悪い、熱くなっちまった」
バリーは直前までの自身の行動を思い返したのか、照れ臭そうに頬を紅色に染めた。彼が大丈夫そうなことを確認し、僕は相変わらず悪戯な笑みを浮かべているもう一人の問題児へと視線を移す。
「君―――クレイさん、だったかな?」
「ええ、そうよ」と嗤い答えた彼女を正面から見据えつつ、言葉の続きを口にする。
「悪いんだけれど―――僕は、友達を嘲笑されてまでヘラヘラとしていられる程温厚じゃないんだ。このままだと、君を嫌いなってしまいそうだな」
「………ふぅん?」
彼女は多少ながらも表情を真面目なものに転じ、態度を改めたように見えた―――少なくとも僕には、だが。
「………貴方に嫌われちゃうのは、ちょっと困るのよね。それって、私の目的に感づいた上での脅し?」
「………さて?」
飄々とした態度でそう答えると、僕は話を切り出すべく出来る限りでの真面目な表情を作り出した。
「………あら、お気に召さなかったかしら。―――私が今話した事は、全て事実だけれど?」
「な、なんだと………!」
彼は激昂の色を言葉に込める。怒りに煽られたバリーはいよいよクレイに飛び掛かろうとしており、既に半ばその腕は彼女に向かって伸びていた。
―――これはまずい。
そう悟った僕は、反射的に二人の間に割り込むようにして、睨み合う両者の視線を遮ると共に、伸びかけている逞しい腕を彼の脇腹の近くまで押し戻す。
僕は努めて穏やかに、バリーに話し掛けた。
「―――落ち着きなよ、バリー」
「………レイ………」
彼は少し落ち着いた様子でそう呟く。彼へ笑顔を向けると、僕はバリーを宥めるべく得意の話術を披露し始めた。
「………君は、誰が何と言おうと、これまでの試験をパスしてここまで来たんだろう?なら、それでいいじゃないか。今ここで大切な物、それは過程や経過なんかじゃなくて結果だけなんだ。そして結果、バリーはここに居る。ギリギリだろうが何だろうが関係ないさ。だろう?」
「あ、ああ………そうだよな。悪い、熱くなっちまった」
バリーは直前までの自身の行動を思い返したのか、照れ臭そうに頬を紅色に染めた。彼が大丈夫そうなことを確認し、僕は相変わらず悪戯な笑みを浮かべているもう一人の問題児へと視線を移す。
「君―――クレイさん、だったかな?」
「ええ、そうよ」と嗤い答えた彼女を正面から見据えつつ、言葉の続きを口にする。
「悪いんだけれど―――僕は、友達を嘲笑されてまでヘラヘラとしていられる程温厚じゃないんだ。このままだと、君を嫌いなってしまいそうだな」
「………ふぅん?」
彼女は多少ながらも表情を真面目なものに転じ、態度を改めたように見えた―――少なくとも僕には、だが。
「………貴方に嫌われちゃうのは、ちょっと困るのよね。それって、私の目的に感づいた上での脅し?」
「………さて?」
飄々とした態度でそう答えると、僕は話を切り出すべく出来る限りでの真面目な表情を作り出した。