ラグナレク
僕は閉じた瞼を、ゆっくりと開いた。
たった今までいた暗黒の世界とは打って変わり、視界に映した風景には色彩があり、そして温かみがある。
仰向けになっていた僕の目に、クリーム色の天井に取り付けられた蛍光灯から発せられる光が差し込む。それは目を醒ましたばかりの僕にとっては余りにも眩しすぎたため、思わず顔をしかめた。








―――また、あの夢か―――。
僕は、今見ていた夢を思い出しながら、一人そう呟いた。まだ寝ぼけている体を起こすように、僕は勢いよく立ち上がり背伸びをすると、顎に手をやり考えるようなポーズをとった。




僕は今までにあれと同じ夢を、もう何回、何十回、何百回………とにかく幾度になるかも解らなくなる程に見た事があった。
あれは、それほどの数を見てきても内容を少しも理解することが出来ない、不思議な夢――――ここまで来ると悪夢とも呼べるだろうか―――であり、この夢を初めて見た幼かった頃には、これは一体何の夢なのだろうか、何の意味があるのだろうかと考えたものの、幼い僕にそれが理解出来る筈もなく(まあ、現在もそれは変わらないが)、その夢に対する僕の中での価値観が、『不思議なもの』から『どうでもいいもの』に変わってしまうのに、そう時間はかからなかった。




………とは言っても、やはり今日のように未だその夢を頻繁に見ている訳であり、いい加減苛々としてくるのもまた、時間の問題だった。
最近では、この意味の解らない夢をどうにか解決してみようと、色々と模索しているのだが―――。




―――結局の所、全く話の糸口が掴めずにいる。
この夢は、これから先もずっと謎のままなのだろうなぁ………と小さかった頃と同じように諦めかけている自分の存在を感じながら、僕は深い溜息をついた。
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