ラグナレク
「―――よし、お前等。リラックスするのもいいけど、そろそろしゃきっとしようぜ。もうテストが始まるまで時間がないみたいだしな」








君がそれを言うか、と僕は突っ込みたい衝動を必死に抑えつけながら、近くにあった時計を見た。確かに、あと二分以内に中に入っていなければ、僕達は失格となるだろう。クレイは時計を見るなり、浮かべた涙を人差し指でそっと拭い、引き攣る口をそっと開いた。








「そうね、バリーの言う通りだわ………。もうじき、テストが始まるようね。―――ここでうろうろする意味もないし、さっさと中に入りましょうよ」

「だな!………よし、それじゃあ準備はいいか?扉を開くぜ」








僕等はごくり、と唾を飲んだ。
―――不思議と、緊張はしなかった。その代わりに、楽しみだという気持ちが無限大に膨らんでいるような気がしていた。二人共同じ事を考えているようで、表情は自然と綻んでいた―――バリーに関しては、ほばにやけ顔であったが。
バリーは一応気持ちを落ち着けようとしているようで、先程までのにやけた表情と一変し、時折見せる真面目な顔つきで、一人でカウントを始めた。その端正な表情は、もう恐らく大丈夫であろうと、不思議に安心させる力を持っているようだった。








「―――それじゃ、行くぜ。………三………二………一………GO!」








彼は勢いよく扉を開けた。
僕とクレイは、彼が突っ走っていったのを見届けてから静かに頷き、後ろからついて行く。バリーによって大きく開かれた扉は、最後の三人である僕達がくぐり終えたのを確認すると、待ち受けていたかのようにぎしぎしと不気味な音を起てながら閉まりだしたのだった。
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