ラグナレク
―――こんこん。
音の無い部屋に、無機質な扉を叩く音が響き渡る。
誰だろうか、などと考えつつ、僕は扉を固く閉ざしていた鎖を右手でそっと外した。
「―――どうぞ」
僕は扉の向こうにいる誰かに、少し素っ気無いとも捉えられそうなトーンで声をかけた。初対面の人物等に対しては少々失礼かもしれないが―――僕の部屋に用事がある暇人だなんて、あいつしかいない。
案の定、待ってましたと言わんばかりに勢いよく開かれた扉の向こうには、僕と同じか、もしくはそれより一、二歳年上といった感じの容貌を湛える青年が立っていた。
「―――おっす、レイ。元気してっか?」
それだけ言うと、彼は白い歯を剥き出しにしながらにしし、と笑った。
僕は予想していた客の登場に軽く鼻を鳴らしながら、出来るだけ厭味っぽく言葉を吐き捨てる。
「………元気も何も、つい三十分前に別れただけだろ」
「ま、確かにな」
彼は僕の厭味を軽く受け流しつつ、再度楽しげに笑い声をあげ始めた。
僕は何となく敗北したかのような気持ちに陥りながら、溜めていた息を吐き出す。
―――彼は、『バリー・ジュプトル』。十八歳の青年で、剣山の如く逆立った金髪には触れたが最期、突き刺さってしまいそうな危ない雰囲気が漂っている。
髪と耳に付けたピアスだけを見てしまえば所謂『チンピラ』であるが、その双眸は穏やかな性格をそのまま醸し出しており、口元には常に笑顔が浮かんでいる心優しい青年だ。
更に背丈は高く、身体も締まっており、顔も良いときたものだから女性からの人気は郡を抜いている。性格も快活で、皆からの信頼も厚い。
―――そんな彼と僕、『レイ・アンセスター』はこの軍―――《強き希望を抱きし戦士(デザイア・ソルジャー)》に幼い頃(具体的には僕が八歳、バリーが十歳の時)に入隊して以来の友人であり、ライバルでもある。
僕達は歳が近いということも助けすぐに意気投合し、年を重ねた今では、こうしてバリーが僕の部屋を訪ねることも少なくない。
音の無い部屋に、無機質な扉を叩く音が響き渡る。
誰だろうか、などと考えつつ、僕は扉を固く閉ざしていた鎖を右手でそっと外した。
「―――どうぞ」
僕は扉の向こうにいる誰かに、少し素っ気無いとも捉えられそうなトーンで声をかけた。初対面の人物等に対しては少々失礼かもしれないが―――僕の部屋に用事がある暇人だなんて、あいつしかいない。
案の定、待ってましたと言わんばかりに勢いよく開かれた扉の向こうには、僕と同じか、もしくはそれより一、二歳年上といった感じの容貌を湛える青年が立っていた。
「―――おっす、レイ。元気してっか?」
それだけ言うと、彼は白い歯を剥き出しにしながらにしし、と笑った。
僕は予想していた客の登場に軽く鼻を鳴らしながら、出来るだけ厭味っぽく言葉を吐き捨てる。
「………元気も何も、つい三十分前に別れただけだろ」
「ま、確かにな」
彼は僕の厭味を軽く受け流しつつ、再度楽しげに笑い声をあげ始めた。
僕は何となく敗北したかのような気持ちに陥りながら、溜めていた息を吐き出す。
―――彼は、『バリー・ジュプトル』。十八歳の青年で、剣山の如く逆立った金髪には触れたが最期、突き刺さってしまいそうな危ない雰囲気が漂っている。
髪と耳に付けたピアスだけを見てしまえば所謂『チンピラ』であるが、その双眸は穏やかな性格をそのまま醸し出しており、口元には常に笑顔が浮かんでいる心優しい青年だ。
更に背丈は高く、身体も締まっており、顔も良いときたものだから女性からの人気は郡を抜いている。性格も快活で、皆からの信頼も厚い。
―――そんな彼と僕、『レイ・アンセスター』はこの軍―――《強き希望を抱きし戦士(デザイア・ソルジャー)》に幼い頃(具体的には僕が八歳、バリーが十歳の時)に入隊して以来の友人であり、ライバルでもある。
僕達は歳が近いということも助けすぐに意気投合し、年を重ねた今では、こうしてバリーが僕の部屋を訪ねることも少なくない。