ラグナレク
そんなバリーが僕の部屋を訪ねてきた場合の理由は、概ね暇潰しだ。彼の暇潰しの方法は電子ゲーム機やテーブルゲームで遊ぶ、菓子を食べたり茶を啜ったりしながら会話を楽しむ、ただひたすらだらだらする―――と随分パターン化されている。今日は荷物を何一つ抱えていないというところを見ると、ひたすらだらだらする為にわざわざここに来たらしい。








「―――それで、今日はどうしたの?」








僕が部屋に入るよう促しながらそう尋ねると、彼は得意げににんまりとして見せた。








「………今日はな、ビッグニュースを持って来たんだ」

「………はぁ?」








―――只の暇潰しじゃなかったのか。
僕は予想を裏切られた驚きにより頓狂な声を上げながら、簡素な造りの椅子に腰掛け、ベージュ色をした机に肘をついた。
彼は僕の反応を嬉しそうに眺めながら、僕と向かい合うように椅子に腰掛ける。僕は机の上に幾つか転がっていた飴玉に手を伸ばし包み紙を剥がすと、口へと放り込んだ。バリーも僕に習い、同様に飴玉を舐めはじめる。
互いに一息入れたのを確認すると、僕はバリーに話の概要を尋ねる事にした。








「―――ところで。ビッグニュースって、一体何なの?」








彼は耳をぴくり、と反応させると、待ってましたと言わんばかりに満面の笑みを浮かべる。舐めていた飴玉を早急に噛み砕くと、バリーはポケットをごそごそと漁り始め、暫くしてからくしゃくしゃに丸められた紙を取り出した。
僕は目の前に差し出された物を視界に入れたと同時に、思い切り顔をしかめる。








「―――何、これ………」

「開いてみろよ」








僕はこくりと頷くと、丸められた紙を丁重に伸ばし始めた。紙は元々二枚あったらしく、伸ばしてゆく内に一枚がぺらりと剥がれ落ち、それをバリーが手にする。

伸ばし終えた紙を摘み上げ、頬杖をつきながら刷り込まれた文字を読み出す。








「何々………」








僕は何となくタイトルらしき分厚い文字を読み上げ、そして―――絶句した。








「適正………審査………!?」








喜びの余り震える声でそう読み上げ、バリーと顔を見合わせる。見遣った先にいた彼は、だらし無く頬を緩ませていた。
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