ラグナレク
『機体適正審査』―――。
それは、その名前が示す通り、現在最も強力な軍事兵器、『High Move Atack Tool(高機動型攻撃兵器)』―――通称『Hi-MAT』に乗る資格があるかどうか、それを確かめる審査だ。
審査では、実技、知識、そして実際の操縦技術などに関する試験を行い、その結果が良かった者五名のみが、『Hi-MAT』のパイロット―――『協調せし者(ハーモニア)』になることが出来るのだ。
『ハーモニア』になることは兵士にとっての大きな夢であり、それは無論幼い僕等とて例外ではなかった。
入隊して右も左も解らない状況の中、僕もバリーも無我夢中で訓練を重ね、夢に向かって日々前進を続けていたのだ。
そんな今まで夢見てきたものが、遂に現実となるかもしれないというのだから、興奮するなという方が無理な話である。多分、今鏡を覗き込んだならば僕の顔もバリー同様緩んでいることだろう。無くてよかった、鏡。
―――僕は極力緩んだ顔を整えるように努めながら、感慨深げにぽつりと呟いた。
「………でも、もうそんなになるんだね………」
声が耳に届いたらしく、バリーは「そうだな」と答え、少し真面目な顔をしてみせた。………まあ、二秒程度でまた崩れてはいたが。
―――『機体適正審査』を受ける資格が生まれる条件は、入隊してから八年が経過した者である事、訓練においての成績が優秀な者である事、審査を受ける事を希望している者である事、この三つをクリアーしているという事だ。
僕とバリーは今年で丁度入隊してから八年目であり、成績はトップクラス、勿論審査は希望していた為にこの知らせが届いたのだろう。
それは言葉では言い表せない程に喜びが溢れてはいるが、それよりももう八年も経った、という事に対する何とも言えない感情が胸の中を渦巻いていた。それはバリーも同じのようで、相も変わらず緩んだ顔のまま、眉をひそめているという奇妙な表情を作っている。僕はそれを見て思わず噴き出しそうになるのをごまかすかのように咳ばらいをし、舌の上で飴玉を舐め転がす事に集中することにした。
それは、その名前が示す通り、現在最も強力な軍事兵器、『High Move Atack Tool(高機動型攻撃兵器)』―――通称『Hi-MAT』に乗る資格があるかどうか、それを確かめる審査だ。
審査では、実技、知識、そして実際の操縦技術などに関する試験を行い、その結果が良かった者五名のみが、『Hi-MAT』のパイロット―――『協調せし者(ハーモニア)』になることが出来るのだ。
『ハーモニア』になることは兵士にとっての大きな夢であり、それは無論幼い僕等とて例外ではなかった。
入隊して右も左も解らない状況の中、僕もバリーも無我夢中で訓練を重ね、夢に向かって日々前進を続けていたのだ。
そんな今まで夢見てきたものが、遂に現実となるかもしれないというのだから、興奮するなという方が無理な話である。多分、今鏡を覗き込んだならば僕の顔もバリー同様緩んでいることだろう。無くてよかった、鏡。
―――僕は極力緩んだ顔を整えるように努めながら、感慨深げにぽつりと呟いた。
「………でも、もうそんなになるんだね………」
声が耳に届いたらしく、バリーは「そうだな」と答え、少し真面目な顔をしてみせた。………まあ、二秒程度でまた崩れてはいたが。
―――『機体適正審査』を受ける資格が生まれる条件は、入隊してから八年が経過した者である事、訓練においての成績が優秀な者である事、審査を受ける事を希望している者である事、この三つをクリアーしているという事だ。
僕とバリーは今年で丁度入隊してから八年目であり、成績はトップクラス、勿論審査は希望していた為にこの知らせが届いたのだろう。
それは言葉では言い表せない程に喜びが溢れてはいるが、それよりももう八年も経った、という事に対する何とも言えない感情が胸の中を渦巻いていた。それはバリーも同じのようで、相も変わらず緩んだ顔のまま、眉をひそめているという奇妙な表情を作っている。僕はそれを見て思わず噴き出しそうになるのをごまかすかのように咳ばらいをし、舌の上で飴玉を舐め転がす事に集中することにした。