ラグナレク
ころころころ。
部屋には沈黙が続き、飴玉が転がされる音だけが響き、消えてゆく。
何なんだ、この状況………と僕が戸惑っていると、つい先程までにやけ顔であった筈のバリーが、いつになく大真面目な顔をして突如僕の顔を真正面から覗き込んできた。
気味悪そうに彼を一瞥してみたものの、真面目な表情は少しも崩れてはいない。―――ていうか、いつの間に作ったんだよその顔………。
溜息まじりに僕が息を吐くと、彼は固く閉ざしていた口をゆっくりと開いた。
「………なあ、レイ」
「………何?」
―――気持ち悪い。
何でバリーがこんな諭すような口調で話をしているのだろう。どう考えても、悪い物を食べたとしか思えない。何時もならば、年相応という言葉とは遠く掛け離れている幼稚な奴だというのに。
僕は椅子の背もたれに全体重をかけつつ、次に訪れるであろう恐怖の言葉に対する注意を万全にした。
「お前は………凄い奴だよな」
―――嘘だ。世界の終焉だ。
軽く眩暈がして、僕は椅子から転げ落ちそうになったが、何とか踏み止まった。
………バリーの口から、こんな言葉が出ようとは………。
世界とは広いものだなあ、と何となく僕は感心した後で、彼の僕へと向けた言葉にまだ何の反応も示していないことに気が付き、慌てて言葉を返した。
「ど、どうしたんだ一体?バリーらしくもない」
「いや………俺、思ったんだよ」
バリーは斜め上に視線をやりながら、静かに語り始めた。
「お前は身体も細くて弱っちい癖に誰よりも努力して、結果何事に関しても俺達の隊のトップに立ってたよな。周りは、俺達より五歳も十歳も年上だったって言うのによ」
「いや………まあ、年齢は関係ないだろ」
身体が細いのは余計だろう、と内心で食いかかりながら言葉を返す。
しかし彼は頚を左右に振り、話を続けた。
「何にしろ、トップを取るっていうのは決して簡単な事じゃあないさ。………俺は、誇っていいと思うぜ」
「………あ、ああ。ありがとう」
―――もう帰してくれ、お願いだから。あぁいや、ここ僕の部屋か。
僕は内心でおどけ、疲れ切ったかのような笑みを浮かべる。
部屋には沈黙が続き、飴玉が転がされる音だけが響き、消えてゆく。
何なんだ、この状況………と僕が戸惑っていると、つい先程までにやけ顔であった筈のバリーが、いつになく大真面目な顔をして突如僕の顔を真正面から覗き込んできた。
気味悪そうに彼を一瞥してみたものの、真面目な表情は少しも崩れてはいない。―――ていうか、いつの間に作ったんだよその顔………。
溜息まじりに僕が息を吐くと、彼は固く閉ざしていた口をゆっくりと開いた。
「………なあ、レイ」
「………何?」
―――気持ち悪い。
何でバリーがこんな諭すような口調で話をしているのだろう。どう考えても、悪い物を食べたとしか思えない。何時もならば、年相応という言葉とは遠く掛け離れている幼稚な奴だというのに。
僕は椅子の背もたれに全体重をかけつつ、次に訪れるであろう恐怖の言葉に対する注意を万全にした。
「お前は………凄い奴だよな」
―――嘘だ。世界の終焉だ。
軽く眩暈がして、僕は椅子から転げ落ちそうになったが、何とか踏み止まった。
………バリーの口から、こんな言葉が出ようとは………。
世界とは広いものだなあ、と何となく僕は感心した後で、彼の僕へと向けた言葉にまだ何の反応も示していないことに気が付き、慌てて言葉を返した。
「ど、どうしたんだ一体?バリーらしくもない」
「いや………俺、思ったんだよ」
バリーは斜め上に視線をやりながら、静かに語り始めた。
「お前は身体も細くて弱っちい癖に誰よりも努力して、結果何事に関しても俺達の隊のトップに立ってたよな。周りは、俺達より五歳も十歳も年上だったって言うのによ」
「いや………まあ、年齢は関係ないだろ」
身体が細いのは余計だろう、と内心で食いかかりながら言葉を返す。
しかし彼は頚を左右に振り、話を続けた。
「何にしろ、トップを取るっていうのは決して簡単な事じゃあないさ。………俺は、誇っていいと思うぜ」
「………あ、ああ。ありがとう」
―――もう帰してくれ、お願いだから。あぁいや、ここ僕の部屋か。
僕は内心でおどけ、疲れ切ったかのような笑みを浮かべる。