ラグナレク
バリーがそんな僕の様子に気付いたかのような素振りは―――微塵も見えない。少しは感づいて貰えると助かるのだが。
ここから逃げ出したい衝動に駆られている僕を余所に、彼は再び口を開く。………その開かれた口から発された言葉は、恐らく僕がバリーに出会ってから言われた事の中で最も驚きの内容を含む―――或いは、『最も気持ち悪い』だろうか―――ものだった。








「―――お前は本当努力家だよ。実を言えば俺、レイの事結構尊敬してるんだ」

「………」








………僕は口をあんぐりと開け、間抜け面を思い切り披露することになった。

一体どうしたんだ、コイツ。
確かに今日はちょっと………いや、結構変だなとは思ってはいたが、まさかこれほどまでとは。ていうか、変とか変じゃないとかそれ以前に、人が完全に変わってしまっている。もしかすると、明日にでも死ぬんじゃないだろうか。だとすればまあ、僕の所に遺言を残しに来たなだと考えられなくもないが。ぼんやりと、そんな事を考える。








「―――だから―――」

「………だから?」








いよいよ話の締めに差し掛かったらしいことを確認すると、僕はごくり、と大きく咽を鳴らした。

―――さあ、いつでも来い。もう今更、どんなことを言われたって驚くものか―――。
数秒後に僕の鼓膜に響くであろう驚愕の言葉に、僕は身構えた。そして遂に―――バリーの口元が動き始めた。








「だから―――これからは、俺の時代だよねーって話!」








―――はい?

僕はその言葉を胸の内で反芻し、意味を理解しようとしたが、それは叶わない。
唐突に浴びせられた幾つかの文字に頭を痛めていた僕に、そんなこと全く気にしていないといった感じのバリーが、尚もにやにや顔を続ける。








「確かに今まではレイの時代だったかもしれないぜ?………いや、そうだったと認めようじゃないか。けどな―――パイロットとなった瞬間から、その形勢は逆転するんだよ!つまり、俺センチュリー到来!!―――解るか?」








僕は一瞬目を丸くした後で―――ぷっと小さく噴き出した。
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