涙。(短編)
心臓が、鷲掴みされたみたいに…切なくて苦しい。
けれどドキドキして…頬が上気していくのがわかった。
だって─…すごく綺麗だったの…
彼の涙が。
頬をつたい、落ち。
表情はあまり変わっていないのに…流れる大粒の涙。
まるで朝露みたいに
透き通っていて、凛としている。
手紙から視線を外した夕貴と目が合うと、夕貴の表情が一気に歪み、私を腕の中に押し込んだ。
綺麗な粒が肩に落ちる。
「ごめん…」
夕貴は何度もその言葉を繰り返し、私は「うん。」と頷くのが精一杯だった。