涙。(短編)
お店の出入り口に向かった時、
ちょうど入れ違いに男女4人のグループが入ってきた。
私は…ただなんとなく…
気になった女の子がいて、その子を見つめていた。
本当に…偶然。
「あ…ゆーき…」
ってその子がすごく小さい声で言ったのを聞き逃さなかった。
見つめていなかったら、わからなかっただろう…
そして前を歩く夕貴の背中が一瞬止まったのも、見逃さなかった。
彼女はほんのり笑顔になったけど…
夕貴は何も言わず店を出て…
私も後を追う。
彼女は私に気付いてすれ違い様に顔を背けた。
──……なにが起きたんだろう。
知り合いなら挨拶ぐらいしてもいいのに…夕貴はしなかった。
今も何事もなかったと、いつもの笑顔で普通に話している。
私もさっきのことに触れられないまま…駅まで来た。