零
「さ、さっき"キミに似合った番人"って言いましたよね?」
「ああ、そのことか。ココにはボクを含めて七人の番人が存在しているよ。」
「じゃあその番人がその扉の向こうにいるってことなんですか?」
「むずかしい」
「はい?」
「ボク、詳しい説明が苦手なんだ。みんなからも良く怒られる」
「は、はあ…。」
つまりは行って確かめろということか。
「この扉を進むと、また扉が現れる。その扉がキミに似合った番人がいる扉だよ」
今度はずれ落ちた眼鏡のことなど気にもせずに少し離れたボクの顔をじっと見つめた。
「キミならきっと第四の門だと思うけどどうだろうね」
「第四の門?あの、」
「扉、opeeeeeeeeeen!!!」
「ちょ、っ!?」
何がキッカケになったのかはわからないが、急にテンションが上がった男性がボクの意見を無視して扉を開いてしまった。
否、どの道前へ進むという選択肢しかボクにはなかったのだろう。
何故なら、後戻りは己の死を意味するのだから。
腹を決めるしかない。
後戻りした場合に命がなくなるということならば、前へ進めば命がなくなることだけは解消できるのだろうから。保証はない。確信も。
ゆっくりと立ち上がる/先が見えない真っ暗な門の前に立つ/恐怖のあまり足が震え出す/一瞬だけ後ろを振り返りボサボサ頭の均等のとれていない大きな黒縁眼鏡をかけている男性が確かにいることを確認/真っ暗闇へと踏み出すと同時に扉がギギギと鈍い音を立てて閉まり出す。ああ、
(もどらなきゃ)
ボクがもう一度男性を振り返った時、間の抜けた男性の声。
「ボクは第壱の門"はじまり"の番人、一葉。忘れても良いけど、忘れないでねー。」
あの支離滅裂な文章を書いた犯人を見つけた瞬間だった。