空になんか憧れない




あの日アタシが見上げた空はどうしようもなく醜くて



きっと空の上でお姉ちゃんが悲しんでいるんだって思ってた






けど、今私が見ているこの空はきっとお姉ちゃんの言ってたあの日の青空と同じ─…






「…おーい!行くぞ波!」


「早くしないと入学式間に合わなくなっちゃうよ♪」



「…うんっ!」






──みんな、笑ってる





傷や痛みを抱えながら歩いていこう。





傷跡を背負いながら一緒に前に進もう。




私たちは誰よりも幸せにならなくちゃいけないんだから。




「綺麗だな…」



「…なんか、あの日の空みたいだね…」



「そうだな!」




…お姉ちゃん、あの日の空をみんなも覚えていたんだね。





あの頃の私じゃ考えられないでしょう?




私、今お姉ちゃんの“親友”の後輩として、隣で笑ってるんだよ?





空の上から見てますか?





お姉ちゃんとの約束通り、私はいつまでも笑い続けるよ





「置いてくぞー」



「波ちゃん早くー!」



「…うん!」





─これからは、みんなと一緒に笑うから!





みんな同じ歩調でゆっくりと並んで歩く。





始まるんだ、ここから。





不安もある



消せない傷も



変えることのできない思い出も




だけどそれ以上に、希望がある。





きっと、これまで以上に幸せになれる。





笑顔と笑い声が溢れる中、再び空を見上げた──





「───あっ、今……」










空が笑った気がした─…






















END




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