A mermaid's tears
prologue
―――むかし、むかし…
とある山奥に湖に面した小さな村がありました。
その村は数十年に一度人が訪れるか訪れないかというほど小さく、そして酷く孤立した村でした。
ある年、その村に数十年ぶりの旅人がやって来ました。
その旅人は旅荷物以外にも大きな葛籠を持っていましたが、村人は久しぶりの旅人に浮かれて誰も気には止めません。
しかし、その事を変に思った人が1人だけいました。
村人が寝静まった頃、その女の人は思いきって旅人に尋ねました。
「その葛籠には何が入っているのですか?」
旅人は少し迷うとしばらくして重たい口を開きました。
「この中には人魚から預かった宝物が入っているのです」
「宝物?」
その人の話によれば、旅人はある時人魚に頼み人魚の肉を食べた―――つまり、永遠の命を授かった。
そして、その代わりに自分の宝物を永遠に守るよう命じられたと言うのです。
「あぁ…こんな事になるんだったら永遠の命なんて望むんじゃ無かった…。」
その言葉を聞いたとき女の人は旅人が可哀想になりました。
しかし人魚の肉を食べれば永遠の命を得る事はしっていても、その人を殺す方法までは知らないのです。
次の日の真夜中。
旅人が眠ったのを見届けた後、女の人は村人全員を集め、昨日旅人から聞いたこと全てを話しました。
「何かあの人を助ける方法は…あの人を殺す方法は無いのですか…?」
しかし彼女同様、誰も旅人を助ける方法を知りません。
誰もが諦めかけていた時、この村で一番の物知りの老婆が口を開きました。
「方法は無いことは無い…」
「本当ですか!?」
「…首を…
首を切り落として殺せばいいのだ」