A mermaid's tears
それにしても…
「…お迎えの人…どこ…?」
確か前に電話した時には迎えをよこすって言ってたはずなんだけど…。
でも、迎えの人ってあの電話の人だったらイヤだなぁ…。
―――数日前
両親に外泊、もといバイトの許可をもらったのは良いけど…
やっぱりバイト先に電話するのってかなり緊張する…!
「やっぱ止めようかな…」
あまりの緊張にバイトを諦めてしまおうかと通話停止ボタンに指を伸ばしかけた。
でも…こんなに良いバイト条件なんて中々ないし、第一なんだか後味が悪い。
…えぇい!何を弱気になってるんだ冬部 雪乃!!
こんな緊張乙女のバイブルを大人買いする時の緊張に比べたらどうって事無いじゃないか!!!
「みんなぁぁぁぁぁオラに力をぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
そう叫ぶと私は思いきって通話ボタンを押すと携帯を耳に当てた。
耳に電子的な音が繰り返し流れてくる。
そして、自分の心臓の音もかすかに耳に響いて来そうだ。
―――…………プツッ
『……………はい』
う、うわ!つつつ繋がった!!!
『………もしもし?』
「え、あ…す、すいません!長期バイトの広告を見て電話した者なんですが…!」
『……あぁ、バイトの……』
失礼かもしれないけど電話の向こう側の人は少し怖い人だなと思った。
口数も少ないし、それに何だかしゃべり方が機械的で気味が悪い…。
『……じゃあ、次の週の日曜までに準備して○○駅まで来て…。
交通費は後で払うから…。あと駅には迎えよこしとくから……。あと………』
「あ、あの!面接とか書類とかっていらないんですか…?」
『………必要ない。』
「そ…そうですか…」
『……じゃ』
―――…………っ…ツー…ツー