くらいもりのなかで。
雨が降っているせいで、5メートル先は白く霞んでいた。


突然、少女が現れた。

赤い色のワンピースに、肩にぎりぎりつく白い髪。

顔はよく見えなかった。

「道路の上にたってる…?…まさかな…。」

よく見ると、少女は手招きしていた。


   ―   こっちへ…おいで?   ―   

その時だった。

いきなり目の前が真っ白になって、車のクラクションが聞こえた。

もしかしたら、ボーっとしていて車に轢かれたのかもしれない。

「俺、死ぬのかな…」

気が遠くなっていく気がした。

だけどそれは、「気がしただけ」だった。

すぐに目の前に森が現れたから。


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