愛されて

“レディースクニリック”

という看板が掲げてある病院に入った…


私は受け付けに向かった。
待合室には誰もいなかった。

「こんにちは…」

受け付けのキレイなお姉さんが私に挨拶した。

「今日は…」

「あのう…妊娠の検査をお願いします…」

私は言った。
お姉さんは…驚きもせずに。

「保険証はありますか？」

「いいえ…」

「保険証がないと…全額負担になりますが、いいですか？」

「はい…」

「じゃあ、この紙に必要事項をお書き下さい」

私は紙を受け取った。

名前・住所・電話・生年月日など。
いろいろと書かないといけなかった。

名前は本当の名前を書いた。
けど…住所も電話番号もデタラメを書いた。

生年月日も3つ、年をごまかした。


記入し終わると同時に
「樫木さん。どうぞ…」
と。
診察室に入れられた。


診察室には…
おばあちゃんぐらいの年の人が椅子に座っていた。
この人がこの病院の先生。

「どうぞ…」
先生に椅子をすすめられて。
私は椅子に座った…

「どうしましたか？」
優しそうに…先生が聞いた。

私は…下を向いた。

急に恐くなった。
本当に妊娠していたらどうしよう？

私が何も言えないでいると。
受け付けの…あのキレイなお姉さんがやって来て
「先生。妊娠の検査らしいです…」
と耳打ちした…