愛されて
「じゃあ、洋平君はいつ、遥香の妊娠に気づいたの?」

歩ちゃんが聞いた…

「2学期の終わり頃、遥香が妊娠しているという噂がたって…僕は遥香に聞きました。妊娠しているって本当か!?って…」
洋平の声が震えていた。

「そしたら…遥香は妊娠しているって…」


「じゃあ、何で…その時、お母さん達に何も言わなかったの?」
洋平のお母さんが聞いた。

「だって、その時にはもう6ヵ月目に入っていて、中絶できないって…そしたら…産むしかないだろう?それに、南高校に推薦が決まっていたから…誰かに言って、大騒ぎになったら…僕が赤ちゃんの父親だって分かったら…推薦が取り消されると思って…だから、言えなかった…遥香も女子大付属の入試が終わるまでは知られたくないって言っていたし…」

私と洋平は…
赤ちゃんの命よりも。
自分たちの都合ばかり考えていた。

最低な親だった…

「今日は…部活の練習に行こうとして…学校に向かっていたら、スーパーの前で遥香がうずくまっていて…聞いたら、陣痛が始まっているって。本当はそのまま遥香を置き去りにしようとしたかったけれど…あまりにも苦しそうだったから…タクシーを呼んで…」

「遥香をタクシーに乗せてくれたの。ありがとう…」

歩ちゃんが優しく言った。
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