愛されて
「僕は…確かに…今日、遥香が産んだ赤ちゃんの父親です…」

「さっき…歩香先生に赤ちゃんが無事に生まれたと聞いて…僕は…何で無事に生まれてきたのだろうって思った…」

「えっ!?嬉しくなかったの…?」

そう聞いたのは誰だったのだろう。

だけど…洋平の口から飛び出した言葉は。

「嬉しくなかった…本当は…赤ちゃんには生まれてきてほしくなかった…」

「洋平…」

みんな…洋平の言葉に驚いていた。

「だって…そうだろう?僕たちは高校生で、まだ働くこともできない…そんな親がどうやって、子どもを育てるんだよ。ムリに決まっている…それに…高校だって…」

洋平の目から涙が溢れては…
流れていく…

洋平だって…辛いのだ。
自分が間違っていること。
無責任な発言をしていることは…
よく分かっていた。

「僕は高校だって行きたいし…まだまだ陸上も友だちと遊びたい…それを赤ちゃんのために犠牲にすることはできません…僕に父親はムリです。赤ちゃんは施設で幸せになれるなら…それで…」

洋平はそう言った。
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